多くの企業が「求人を出してもよい人材が集まらない」という悩みを抱えています。このような採用課題を解決する手法として、近年注目されているのが「リファラル採用」です。
この記事では、社員に人材を紹介してもらう採用手法である「リファラル採用」について、導入のメリット・デメリットや運用方法を紹介します。
1. リファラル採用とは？縁故採用との違い
リファラル採用は、自社の社員から人材を紹介してもらう手法です。リファラル（referral）は「紹介」や「推薦」を意味し、採用コストを抑えながら優秀な人材を獲得できる点で注目されています。
欧米では既に広く採用されており、日本でもベンチャー企業を中心に導入が増加しています。縁故採用と似ていますが、縁故採用は血縁や特別なつながりのある人物を対象とするのに対し、リファラル採用は通常の選考過程を経てスキルや特性を重視して採用を判断します。
2. リファラル採用の採用戦略における位置付け
多くの企業がリファラル採用と併せて「採用媒体」や「人材紹介」などの手法を併用しています。リファラル採用は優秀な人材の獲得が期待できますが、定期的な採用や急募の欠員補充には不向きな場合があります。
採用媒体はコストをかけることで多くの転職者にアピールでき、人材紹介は必要なタイミングで人員を補充できますが、人材のスキルや自社とのマッチ度はリファラル採用より劣る可能性があります。従来の採用手法にリファラル採用を加えることで、質と数のバランスを保てます。
3. リファラル採用が重要視される背景
人材不足が深刻化する中、精度の高い採用活動を実現するためにリファラル採用を導入する企業が増えています。少子高齢化や働き方の多様化により優秀な人材の確保が難しくなる中、リファラル採用は自社をよく知る社員からの紹介で、候補者の人柄も把握しやすいため、採用後の早期離職を防ぐ効果も期待できます。
4. リファラル採用の目的
企業がリファラル採用を導入する目的は「最適な人材の発掘」です。リファラル採用では外部機関に頼ることなく、信頼できる社員からの紹介で採用活動を進めます。これにより採用競合と競うことなく、最適な人材に出会える可能性が高まります。
また、リファラル採用は社員全員がリクルーターとしての役割を担うため、企業理念や魅力を再確認する機会にもなり、エンゲージメントを高める効果もあります。
5. リファラル採用のメリット
リファラル採用には多くのメリットがあります。
5-1. 人材のマッチングとエンゲージメント向上
リファラル採用では、企業が求めるスキルや人材像を社員に周知することで、理想の人材を紹介してもらいやすくなります。また、紹介された人材は企業の風土や業務内容を理解しているため、定着率やエンゲージメントの向上につながります。
5-2. 採用コストの削減
求人サイトの掲載料や人材紹介エージェントの紹介料が不要になり、人事の工数コストも削減できます。紹介者にインセンティブを設けても、全体的な採用コストは低く抑えられます。
5-3. 転職市場に出ていない人材の採用
リファラル採用では、転職サイトやエージェントに登録していない潜在層にアプローチでき、他の採用手法では実現しにくい人材との接点を持てます。
5-4. 即戦力となる人材の採用
自社で活躍する社員と似た価値観や能力を持った人材を紹介してもらえるため、即戦力として期待できます。入社後のミスマッチが少なく、選考や育成にかかる時間やコストを削減できます。
5-5. 自社の課題を見つける機会
リファラル採用では、候補者から自社の改善点に関する忌憚のない意見を聞けるため、新たな課題に気づき、企業の成長につなげることができます。
6. リファラル採用のデメリット
メリットが多いリファラル採用ですが、注意が必要なデメリットもあります。
6-1. 人間関係と人材配置に配慮が必要
選考中や採用後の人間関係には細心の注意が必要です。不採用になった場合、紹介者との関係が悪化する可能性があります。また、採用後に一方が退職すると、もう一方も退職するリスクがあります。
6-2. 入社までに時間がかかる
優秀な人材ほど現職で活躍していることが多く、採用決定から入社までに時間がかかる場合があります。急募の求人には不向きです。
6-3. 社員や候補者との温度差
社員や候補者との間に温度差がある場合、紹介や採用が進まないことがあります。信頼関係が築けていないと協力を得られない場合もあります。
7. リファラル採用の合格率
株式会社MyReferの2019年の調査によると、リファラル採用の合格率は20％で、通常の応募の約14倍とされています。リファラル採用では、紹介者が候補者の人柄やスキルを見極めた上で推薦するため、マッチ度が高く、合格率が高い結果となっています。
（参考：株式会社MyRefer「イマドキの若者は先輩・知人の声で就職先を決めたい 新卒リファラル採用、応募からの内定率が通常の14倍に」）
8. リファラル採用の具体的な誘い方
リファラル採用で友人や元同僚を誘う際の一般的な流れは以下の通りです。
【リファラル採用の流れ】
①自社を紹介したい友人・知人に声をかける
②候補者が応募の希望を伝える
③人事に候補者を紹介する
④人事から候補者の人物像をヒアリング
⑤面談の日程調整を行う
⑥面談を実施する
この流れでは紹介者の負担が大きくなるため、紹介に集中してもらうためにも、日程調整などは人事が担当するようにすると効果的です。
9. リファラル採用の成功のための流れ
リファラル採用を成功させるための具体的なステップを解説します。
（1）社内にリファラル採用を周知
リファラル採用を実施するには、社員の協力が不可欠です。まずは自社の社員にリファラル採用について周知し、その仕組みや重要性を理解してもらいます。
（2）紹介への意欲喚起、インセンティブの設定
社員に積極的に候補者を紹介してもらうため、インセンティブを設けるなどして意欲を喚起します。
（3）リファラル採用を活発にする仕組み化
社員が候補者を紹介しやすい仕組みを整えます。空いているポストや求めるスキルを社内に周知し、紹介フォーマットを用意するなどの工夫が必要です。
10. リファラル採用の報酬は違法？
リファラル採用では、紹介者にインセンティブを提供することがありますが、職業安定法第40条の規定により報酬を与えることは原則禁止されています。ただし、賃金や給与として支払う場合は例外として認められます。違法にならないためのポイントは以下の通りです。
【違法にならないためのポイント】
①就業規則や賃金規程に記載する
②金銭報酬を高額にしない
リファラル採用を制度として社内規程化し、報酬額も適切に設定しましょう。
リファラル採用は、人材のマッチング精度を高め、採用コストを削減する効果的な手法です。自社に合った優秀な人材を確保するために、リファラル採用を積極的に活用しましょう。
