採用ピッチ資料とは、求職者向けに特化した「会社説明資料」です。
通常の企業説明資料とは異なり、求職者がその企業で働くイメージを抱きやすい内容が中心に記載されています。
この記事では、採用ピッチ資料を作成する企業の担当者向けに、資料の基本的な概要、作成のメリット、記載すべき項目などを成功事例とともに紹介します。
1. 採用ピッチ資料とは？
採用ピッチ資料は、求職者向けの会社紹介資料を指します。「ピッチ」という言葉は「短いプレゼンテーション」を意味します。採用ピッチ資料は、求職者が企業で働くイメージを持ちやすくするための手法の一つです。
この資料には、求職者が関心を持つ情報や企業が伝えたいメッセージを体系的かつ物語性のある形でまとめます。
会社案内と似ていますが、採用ピッチ資料のターゲットは求職者に限定されています。会社案内は顧客や投資家、株主など幅広い対象に向けた資料ですが、採用ピッチ資料は求職者のために詳しい情報を盛り込み、実際に働く姿をイメージさせる内容になっています。最近では、企業が動画でこの資料を公開するケースも増えています。
2. 採用ピッチ資料の作成メリット
採用ピッチ資料を作成するメリットを紹介します。
2-1. 認知の拡大
採用ピッチ資料を作成することで、求職者への認知度を高めることができます。資料をWeb上で公開することで、多くの求職者の目に留まり、興味を持ってもらうきっかけを作ることができます。自社サイトだけでなく、SNSや求人媒体、リファラル採用など、様々な場面で活用することで、応募数が大幅に増えることが期待できます。
2-2. マッチ度の向上
採用ピッチ資料には企業の理念や求める人材像、給与体系や評価制度などが詳しく記載されているため、求職者は自分に合った企業かどうかを判断しやすくなります。これにより、入社後のミスマッチを防ぎ、内定辞退や早期離職の防止に役立ちます。
2-3. 採用コストの削減
採用ピッチ資料を事前に公開することで、面接時の企業説明にかかる時間を短縮できます。これにより、面談や面接をお互いの理解を深める有意義な時間にすることができ、結果的に採用コストの削減にもつながります。
3. 採用ピッチ資料の記載項目
採用ピッチ資料に記載する主な項目を紹介します。
【採用ピッチ資料の記載項目】
・会社概要
・組織概要
・採用情報
各項目で記載すべき具体的な内容を紹介します。
3-1. 会社概要
会社概要には、自社が展開している事業内容やこれまでの歴史、企業理念などが記載されます。
【事業内容】
自社が提供するサービスや事業の詳細を具体的に説明します。複数の事業がある場合は、一覧を作成し、各事業の詳細を次のページから説明すると見やすくなります。
【沿革】
創業から現在に至るまでの「企業の歩み」を時系列で整理し、特に重要な出来事について詳しく記述します。
【MVV（ミッション・ビジョン・バリュー）】
企業のミッション、ビジョン、バリューを明確にし、求職者が理念に共感しやすいように説明します。
3-2. 組織概要
組織概要では、「どのような人」が「どのような働き方」をしているのかを紹介します。
【メンバー紹介】
会社全体のメンバー構成を大まかに説明します。年齢や性別、部署ごとの分布をグラフで示すとわかりやすいです。社員紹介は採用サイトやSNSのページへのリンクやQRコードを使って誘導すると効果的です。
【社風・文化】
企業の雰囲気を伝え、求職者が働く姿を想像しやすくします。社内イベントや社員インタビューの紹介も理解を深めるために効果的です。
【勤務形態】
働き方や雇用形態について詳細に記載します。求職者が企業を選ぶ際に重視するポイントをしっかりとアピールします。
【福利厚生】
提供される休暇制度や待遇などの福利厚生について具体的に紹介します。独自の制度がある場合は、その情報を詳しく説明します。
評価制度やボーナスの仕組みについて詳しく説明し、求職者の理解を深めます。
3-3. 採用情報
最後に、求職者に向けた採用情報を記載します。
【求める人材】
企業が求める人材像を明確に伝えます。
【選考フロー】
入社までの選考過程を具体的に説明し、求職者の不安を減らします。
【自社の課題やメッセージ】
企業の課題や求職者へのメッセージを伝えることで、ミスマッチを防ぎます。
4. 採用ピッチ資料の効果的な作り方と流れ
採用ピッチ資料を効果的に作成するためのポイントを紹介します。
4-1. 自社の魅力・求める人物像を明確にする
効果的な採用ピッチ資料を作成するためには、まず自社の魅力や求める人物像をはっきりさせることが重要です。具体的に説明した上で、求める人材の特性を明確にしましょう。
4-2. 印象的かつ簡潔に伝える
情報量の多い採用ピッチ資料では、印象的かつ簡潔に伝えることが大切です。求職者が理解しやすいように、一目でわかる工夫をしましょう。グラフや図を使って読みやすさを向上させます。ダイジェストバージョンの動画を作成し、音楽やナレーションを追加することで、企業の特長をより印象的に伝えることも良いアイデアです。
4-3. ストーリー性を意識する
求職者が最後まで読み進めたくなるように、ストーリー性を持たせましょう。必要な情報を順序立てて構成し、求職者の視点に立って、興味を引く内容にします。
例えば、企業理念の後には社員の思いや「人」に関する項目を記載し、求職者が企業に対して関心を持つようにします。
4-4. 求職者の求める情報を盛り込む
求職者が知りたい情報を含めることが重要です。「社内の人間関係が良好か」「望むキャリアを築ける環境が整っているか」「休暇が取りやすいか」などを具体的に紹介します。社員の体験談やインタビューを用いると効果的です。
4-5. 効果検証を行い常に更新し続ける
採用ピッチ資料は一度作成しただけで終わりではありません。効果を検証し、常に改訂することが重要です。古い情報をそのまま掲載していると、企業の信頼性が低下する恐れがあります。最新の情報を正確に伝えるため、定期的な見直しと情報の更新を行いましょう。
5. 採用ピッチ資料の成功事例3選
成功している企業の採用ピッチ資料の事例を紹介します。
5-1. 株式会社SmartHR
採用ピッチ資料の先駆けとなったのが株式会社SmartHRです。資料を公開すると応募者数が5.3倍に増加し、半年で24万回も視聴されました。オープンな社風を示し、好印象を与えることに成功しました。
（参照：株式会社SmartHR「採用ピッチ資料」）
5-2. 株式会社リンクアンドモチベーション
株式会社リンクアンドモチベーションは、ソフトウェアエンジニア向けの採用ピッチ資料を公開しています。自社のエンゲージメントレーティングや月次収益を公開し、Q&Aやオンボーディングの情報を提供しています。
（参照：株式会社リンクアンドモチベーション「採用ピッチ資料」）
5-3. 株式会社FABRIC TOKYO
株式会社FABRIC TOKYOは、ユーザーの採寸データを基にオーダースーツやシャツをオンラインで提供しています。社内カルチャーやユニークな社内転職制度「転職チャレンジ（転チャレ）」について詳しく紹介しています。
（参照：株式会社FABRIC TOKYO「採用ピッチ資料」）
