採用活動は、大手企業に比べ中小企業にとっては圧倒的に難しいとされています。
なぜ中小企業の中途採用は難しいのでしょうか。
本記事では、中途採用が難しい理由を解説し、中小企業が抱える採用上の課題に対する対策について紹介します。
1.中途採用が難しいと言われる理由
近年、労働人口の減少に伴い、人手不足が深刻化しており、中小企業に限らず中途採用全般が難しい状況にあります。
まずは、中途採用が難しい理由を紹介します。
1-1. 求人倍率の上昇
2009年以降、有効求人倍率は増加傾向にあります。
2023年9月に厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況(令和5年8月分)」によると、有効求人倍率は新型コロナウイルスの影響で2020年度は一時的に下がりましたが、その後再び増加傾向にあります。
有効求人倍率の上昇は企業側から見ると「採用が難しくなる」ことを意味します。これにより、企業間での人材獲得競争が激化し、中途採用が一層難しくなっているのです。
(参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年8月分)」)
1-2. 即戦力の人材が不足している
企業は経験やスキルを持つ即戦力人材を求めます。しかし、採用市場にはすぐに現場で活躍できる人材が少なく、中途採用が難しくなっています。
即戦力となる人材は既に他企業で活躍しており、企業が離職防止のために好待遇を提供していることが多いです。また、実力のある人材は「取引先からのスカウト」や「フリーランスへの転身」など複数の選択肢があり、転職市場には現れにくい状況です。
1-3. 人材の見極めが難しい
中途採用は新卒採用と比べて人材の見極めが難しいです。新卒採用では応募者全員が未経験者であるため、志望動機や適性を基に選考が可能ですが、中途採用では同業種の経験者や異業種からの未経験者が混在します。
そのため、さまざまな職歴や経歴を持つ人材を評価することは容易ではなく、採用担当者に高い能力が求められます。
1-4. 採用活動に時間をかけられない
中途採用は、人手不足や欠員補充を目的とすることが多く、早急に人材が必要なため、採用に時間をかけられないことも要因となります。
時間が限られると、応募者の適性を見極めることが難しく、企業と入社者の間にミスマッチが生じやすくなります。このため、短期間で自社にマッチした人材を獲得することは非常に難しいです。
2.中小企業の中途採用が難しい理由
中小企業の中途採用が難しい理由を大手企業と比較して見ていきましょう。
2-1. 知名度が低い
中小企業は大手企業と比べて知名度が低い場合が多いです。このことは広告費にかけられる予算が少ないことも起因しています。
人は自分の知らないものに対して恐怖心を抱くため、知名度の低い企業よりも知っている企業を選ぶ傾向が高いです。つまり、知名度が低いことは転職先として選ばれる可能性が低いことに直結します。
2-2. マンパワー不足
中小企業では、人事担当が他の業務を兼務しているケースが多くあります。
大手企業では分業されている人事関連の業務を一人でこなすため、採用業務に十分な時間を割けないこともあります。他の業務に圧迫され、応募者対応が後回しになることも多いです。
売り手市場が続く昨今、応募者対応を迅速に行わないと、優秀な人材は他企業に流れてしまう可能性が高くなります。
2-3. 「中小企業」のイメージ
中小企業には以下のようなイメージが付きまといます。
・安定していない
・給料が低い
・福利厚生が充実していない
・研修制度がない
・休みが少ない
・残業が多く、残業手当が出ない
実際にはそうでない場合も多いですが、このようなイメージが求職者の間で広まっているため、中小企業への応募が少ないのが現実です。
3.中途採用で失敗するケース
中途採用が失敗するケースを具体的に3つ紹介します。
3-1. 求人募集をかけても応募者が集まらない
求人募集をかけても応募者が集まらないことで、中途採用に失敗するケースが多いです。求める人材が応募しないこともあります。
応募者が集まらない原因としては、知名度の低さ、他社に比べて労働条件が劣っている、転職市場に存在しにくい人材を募集しているなどが考えられます。
3-2. 採用可否の判断が遅い
求める人材から応募があっても、採用可否の判断が遅いことで失敗するケースもあります。
中途採用の求職者は複数の企業の選考を同時に受けていることが多く、早く転職先を確定したいと考えるのが一般的です。そのため、採否の意思決定が遅いと、採用可否の連絡が早い企業に決めてしまうことがあります。
3-3. 入社後のフォロー不足により早期離職につながる
無事に入社に至ったとしても、入社後のフォロー不足によって早期離職につながることがあります。
特に未経験者は業務の基本からわからないため、手厚いサポートが必要です。また、経験者も入社後のフォローが不足すると不安感を募らせ、早期離職につながります。
4.中途採用がうまくいかない時の対処法
中途採用がうまくいかない時はどうすればいいのでしょうか。対処法を紹介します。
4-1. 採用基準を明確に決める
必要な人材を採用するためには、採用基準を明確にすることが大切です。転職市場の調査や現場へのヒアリングを通して、求める人材の具体的なペルソナ設計を行いましょう。
経験者の場合は「〇〇の職務経験が1年以上」「〇〇資格所有者」など、具体的な基準を設けると分かりやすいです。
4-2. 採用方法や手順を見直す
採用手法によって獲得しやすい人材は異なるため、採用方法を見直すことも重要です。「採用基準」と「自社の採用課題」を照らし合わせ、最適な採用方法を検討しましょう。
複数の手法を組み合わせ、多くの求職者の目に留まりやすくすることが効果的です。また、応募者へのファーストコンタクトや採用可否の意思決定はスピードが重要です。連絡ツールの活用なども検討しましょう。
5.中小企業向けの中途採用がうまくいかない時の対処法
ここまで中小企業の中途採用が難しい理由を説明しました。では、具体的に何を改善すれば中小企業の中途採用がうまくいくのでしょうか。
知名度を上げることは一朝一夕で実現できるものではなく、地道なブランディングが必要です。そこで、マンパワー不足の解消と求職者が抱くマイナスイメージの払拭がポイントとなります。
5-1. マンパワー不足を解消する
最も手っ取り早い解決法は増員ですが、それが難しい場合は「その採用業務は時間をかけるべきか」を考えましょう。
最近では、採用管理システム(ATS)を導入し、応募者管理を一元化する企業が増えています。また、一部業務を外部に委託する採用代行(RPO)も利用されています。
5-2. 求職者が抱く中小企業へのマイナスイメージを払拭する
中小企業へのマイナスイメージは、求人広告の打ち出し方を工夫することで覆せます。
悪いイメージを払拭するには「具体性」が重要です。自社の魅力を具体的に伝えることで求職者のイメージは良い方向に変わります。以下に、失敗しがちな求人広告の例を紹介します。
・若くて活気あふれる社風です
・未経験者も大歓迎です
・異業種からの転職者も数多く活躍しています
これらのフレーズはよく見かけますが、ありふれた打ち出しです。社名を変えても違和感のないメッセージでは魅力的に感じられません。
現在の求人広告は自社でしか言えないことを伝えていますでしょうか。今一度、自社の強みや特徴を見直す必要があるかもしれません。